韓国で最も素敵なスポット
トレンドをリードするフラッグシップストアとショップ11選
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伝説のバベルの塔:想像の実現
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旧約聖書によると、バベルの塔は古代バビロニアの人々が建設したとされる伝説上の塔です。注目したいのは宗教的な側面ではなく、その絵にあります。ピーテル・ブリューゲルは1500年代に活躍したブラバント公国(現在のベルギー・オランダを含む地域)の画家です。彼の作品の中でよく知られている『バベルの塔』(1563年)を見れば、今日の空間や形態と類似性を持っていることが分かります。旧約聖書を紐解くと、同じ言葉を用いていた人たちが火を使うようになり、やがて文明が発達し、ついに神の領域である天に届こうとすると、神が空から降りてきて彼らの言葉を乱しお互い相手の言葉を理解できないようにし、塔の建設をやめさせたというバベルの塔を巡る話があります。それゆえに絵の中でもバベルの塔は未完成のまま描かれています。
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この行為。想像を絵という形で表現し、そこに物語を吹き込む、これが「漫画」というジャンルです。
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漫画はだれでも幼少期に一度は触れたことがある大衆文化です。自分もまた幼い時期、数多くの漫画とともに成長してきました。今流行りの『ポケットモンスター』から韓国のテレビアニメ『ウンビ・カビのむかしむかし』や『赤ちゃん恐竜 ドゥーリー』、そして20代から30代になると伝説の漫画『ONE PIECE』に至るまで、とても幅広いジャンルの漫画を親しんできました。小学生の時は、友だちと一緒にBEXCO(釜山にある総合展示・コンベンションセンター)で開かれる(日本のコミケに当たる)コミックワールドに行くほどのめりこんでいたので、「その頃の自分は漫画が心底、好きだった」と言い切れます。大人になった今、昔ほどではありませんが、漫画を全く読まないわけではありません。世の中のさまざまなことについて書かれた興味深い本を読んだり自分でモノを書く時にも、漫画から新たな想像力を得ることもあります。中でも『ONE PIECE』という漫画は7歳の時に読み始め、今でも連載が続く作品なのでいまだに読んでいます。また、韓国の強みである「コンテンツ」という観点から見ても、いまだ漫画というジャンルは今の時代にも脈々と生きています。Net何某で配信される韓国コンテンツ『Sweet Home -俺と世界の絶望-』という人気作品も韓国のウェブ漫画が原作です。また、『Calm Down Man(沈着マン)』としても活躍するイ・マルニョン氏や『チュポル』という愛称で呼ばれるチュ・ホミン氏など有名ウェブ漫画家たちがメディアに顔を出し活躍していることや、漫画の歴史に触れるドキュメンタリー番組や京畿道(キョンギド)利川(イチョン)市にある「青江漫画歴史博物館」の存在などから見ても、漫画というものが、もはや「子どもたちが読むもの」という領域を超えていることが分かります。むしろ我々の文化に深く根を下ろし、新しい文化を創り出す原動力になっていると言った方が説得力があるかもしれません。
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その同一線上で考えてみると、西洋のヒーローもの『MARVEL』の作品も韓国の人々から熱狂的な支持を受けているのではありませんか?アメリカのグラフィックノベルやMARVELのストーリー、そしてあらゆるジャンルの人気漫画はアニメーション化されても面白いですが、やはり紙に書かれた漫画だからこそ自分のペースで読んで楽しめる良さもあります。
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空間という点から捉えてみると、漫画がたくさんある空間は自分の幼い時からありました。それは家の近所にある漫画房(マンファバン)と呼ばれる所で、大体、建物の地下や2階より上にある場合が多く、漫画やビデオテープを借りて見ることができる空間でした。雰囲気は薄暗く、タバコの臭いがきつかった記憶がありますが、そんな雰囲気を一新し登場したのが漫画喫茶チェーン店「ノル何某」というところでした。しかし、そこは漫画を読むという素晴らしい大衆文化を楽しむという姿が見受けられない空間でした。さらに、今日のようにインターネットのストリーミングサービスが絶大な力をもってくると、オフラインの漫画房や漫画喫茶に行く人は減り、その空間はどんどん居場所を失いつつあります。
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漫画を愛する自分からすると、そのような経験ができる場所が消えていくのは非常に悲しいことです。
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そんなある日、偶然見つけたこの空間で再び漫画を読み大衆文化を楽しむ方法を見つけました。この空間はシンプルです。漫画本やグラフィックノベルからディープなジャンルの雑誌まで揃った本屋です。しかし、面白いことに真面目な本と一緒に、薄い紙に印刷された古い漫画本や素敵な本も置かれています。店内に流れる音楽もジャンルが様々。クラシックの時もあれば洋楽が流れることもあります。注目すべきは、今の時代、街中でよく見かけるカフェが3階にあることです。そして「バー」もあります。店に入ると、カウンターの後ろにはウイスキーや様々なお酒がずらりと並び、まるで素敵な聖殿のような空間です。バベルの塔の中もこんな感じだったのでしょうか。店の中へと足を踏み入れると、正面には素晴らしい空間が広がっており、たくさんの本とくつろげる椅子があります。むしろ評判のいい図書館の椅子よりも座り心地もはるかによさそうです。
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そしてバベルの塔のような建物をぐるぐると上がっていくと、そこに現れる美しい空間と漫画の本。そして最上階に上がれば、空から降り注ぐ太陽の陽射しとウイスキー。そこにはクラシックが流れ、好きな本が存分に楽しめます。
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「美しい空間、新しい場面、素敵な鑑賞」
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頭の中だけで想像していた伝説の空間が現実のものとなりました。自分が2022年に訪れたスポットの中で最も美しい場所と断言できます。ここで座って、本を楽しんでいる人たちの表情がそれを証明してくれます。
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ここは想像の中にあるグラフィックの聖地、経理団(キョンニダン)キルにある『グラフィック』です。
- 所在地_ソウル特別市ヨンサン区フェナムロ39ギル33
- 営業時間_13:00~23:00 [月曜休み]
- 入場料:15,000ウォン(夜7時以降に入場する場合は入場料5,000ウォン割引、または入場料の代わりに酒類を購入)
- アルコールメニューのみ添付。
- #複合文化施設
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- #バー
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生きている歴史書、聖水(ソンス)
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1960年に自然発生的に形成されたソウル特別市城東区(ソンドング)聖水(ソンス)にある工業団地で、1963年に韓国の大手文具メーカー・MONAMI(モナミ)の工場がソウル西部の麻浦(マポ)からここに移転して以来、工業団地として成長してきたといわれています。
団地など大規模な共同住宅が主流で「アパート共和国」とも呼ばれる韓国が、アンバランスな居住文化を発展させていく中で、聖水には工業団地と住宅団地が混在する独特な「都市組織」が生まれました。この界隈はおよそ400軒を越える手作り靴工房があるエリアでもあり、この他にも自動車、印刷関連の工場が密集するところでもありました。住居と工業、商業が混在する都市組織。韓国の歴史の片鱗をうかがわせる場所です。
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しばしば自然発生した地域ほど暮らしやすいという言葉を耳にすることがあります。特に「釜山(プサン)」という都市は計画都市ではなく、住居と色々な商・工業空間が共存する特別なケースと言えます。それは都市形成の歴史の中で見てみると、中世時代に似ています。昔、ローマ人はオスマン帝国の侵攻から逃れるために、自然の地形を活用した要塞都市を作りました。韓国近現代史を振り返ってみても、避難民によって急成長を遂げた釜山という都市がそれに似ています。特に甘川(カムチョン)、影島(ヨンド)、南浦(ナンポ)といった地域の形成過程がより似ているといえます。こういった都市組織では、住まいの周辺で生活上必要な行為を済ますことができます。金物屋や精肉店、美容室、鍵屋、クリーニング屋、靴屋、郵便局、スーパーはもちろん交通の便まで、子供の頃、自分が住んでいた釜山・金井(クムジョン)区の都市組織もそうでした。このような都市の中で起こる一連の行為は、特別な場面や利益をもたらすこともあります。親と一緒に近所のお店で買い物をすることは、手を引かれて連れてこられた子どもたちにとって社会性を育むよい教育の場にもなり、また、店の人々という生身の監視カメラが一種のセーフティーネットとなって、いつも店に来て顔見知りのお得意さんの子どもたちを保護するという利点もあります。
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ソウルではこのような街を見つけるのは至難の業かもしれません。あえていうならば、この聖水が似ています。現在、麻浦や龍山(ヨンサン)、城東(ソンドン)という街は再開発が計画されていて危うい状況であるのも事実ですが、その昔、自然発生的に形成された空間についてはできる限りその持続可能性に焦点を合わせてほしいと思います。空間とは単に商業的な論理のみで考えてしまうと、そこに住む大多数の人たちにとって経験という側面において貧困をもたらす危険性を孕んでいるからです。
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豊かな経験が失われた都市は荒野の砂漠と変わりありません。
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守るべきものは都市の持つ空間の「構成力」です。住居と工業、商業が混在する都市。計画されて生まれた都市ではありませんが、ここを訪れる人も、今住んでいる人も、いまこの都市の構造の中で、十人十色自分なりのスタイルで暮らしています。
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計画の有無にかかわらず、都市は計画通りに変わりゆくものではありません。これは明白な事実です。
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自分は都市の経験を語る時、その多様性にフォーカスを当てます。生態系のアンバランスは絶滅をもたらすということは誰もが知っている科学的事実です。空間も時代によって変化していく驚くべき有機体であるがゆえ、種のアンバランス、つまり多様性を失うことによって、空間における経験も絶滅に至ることになります。さらに高い価値と経験を求め、上へ上へと目指しても届くことがない、この空間の時代、聖水洞界隈は危機的状況に瀕していますが、嬉しいことに、ここ聖水の人々は再び新たなストーリーを作りはじめています。
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今では住居、商業、工業だけでなく文化に関連した空間も次々と誕生しています。聖水洞が本来持ち続けてきた都市構成的特性が今まで以上に際立ってきています。もしかすると、聖水という場所は、韓国が発展してきた片鱗を隈なく記録した歴史書に近いのかもしれません。今回はそんな聖水の、とあるスペースをご紹介したいと思います。
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色々な物語が集まり、また別の物語が作られていく。これは都市のことを言っているように思えます。
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ここはイタリアの詩人ジャンバティスタ・バジーレの『物語のなかの物語(LE CONTE DES CONTES)』(ペンタメローネ/五日物語)を標榜する空間 #LCDCSEOUL
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プログラム - 展示、カフェ「EPHEMERA」、バー「BAR POSTSCRIPT」、ポップアップスペース「DOORS _ 展示およびブランドショールーム」、ショップ「LE CONTE DES CONTES‗衣類・小物」
- 位置_ソウル特別市ソンドン区ヨンムジャン17ギル10
- 営業時間:各店舗ごとに営業時間が異なる(A棟3階は月曜定休)、ホームページで確認可能
- 駐車可能
- 設計_事務所孝子洞 [建築家ソ・スンモ]
- #ショップ
@architectu
キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(Catch me if you can)
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レオナルド・ディカプリオとトム・ハンクスが主演を務めた大変有名な映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』。ディカプリオは天才詐欺師を演じ、あらゆる職業への変装から卓越した話術、偽造などによりFBI捜査官役のトム・ハンクスを翻弄するというのがこの映画のあらすじです。映画でディカプリオは「パンアメリカン航空(Pan American World Airways)」、通称「パンナム(PAN AM)」の副操縦士に扮し、追いかけてくるFBIから逃げ回ります。
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この有名な映画に出てくる航空会社「パンナム」が今回の場所の主人公です。
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パンナムという航空会社はティーンエージャーには馴染みのない名前ですが、それ以上の世代なら知っている人が多いかと思います。当時、一世を風靡したドラマや映画などマスメディアに頻繁に登場し、その名を馳せた航空会社です。それだけではなく実際に世界トップの航空会社だった時期もありました。1920年代にアメリカとキューバを結ぶ航空輸送事業からスタートし、第二次世界大戦後には旅客輸送事業で成長を遂げ、1990年代まで活躍した伝説のブランドです(その後、会社は破産し、現在はロゴのライセンスのみ残っています)。
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今となっては、パンナムという航空会社より有名なのが、このブランドの「ロゴ」です。青く丸い地球儀の上に「PAN AM」という略称が入ったロゴは航空会社だったことを知らなくても一度はどこかで見た覚えがあるはずです。
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一時は人々を国から国へと運び、暮らしの範疇を広げてくれたブランドのロゴ。韓国の会社がそのライセンスを取得し、彼らのストーリーを「ライフスタイル」ブランドとして生まれ変わらせました。復活したそのブランドのロゴは、いまではまた違う形で暮らしの領域を広げようとする本拠地として、一番注目されている聖水洞にフラッグシップストアを構えました。
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聖水洞の形成過程や現在の状況については、これまで度々取り上げてきましたが、今回はこの街にまつわるストーリーについてもう少し付け加えてお話ししたいと思います。
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この聖水という土地は韓国の歴史上、例を見ないほど様々なジャンルの空間が共存する場所です。カフェ、レストラン、飲み屋、展示場、ポップアップストア、フラッグシップストアはもちろん、住居、工業、オフィスまで人が活動する街のありとあらゆる場面がそこにあります(大型商業スペースやパブリックスペースを除く)。そういった多様性があるからこそ、むしろそれぞれの個性を発揮しやすい場所でもあります。
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特に長年にわたって工業団地として使われていただけに、閉鎖された工場や倉庫を利用し新たなシーンを続々と創り出している場所で、今日ある空間もその流れから生み出されたものです。
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一昔前まで航空会社のブランドだったロゴがライフスタイルブランドとして生まれ変わったパンナム(PAN AM)聖水フラッグシップストア。その空間のいたるところにブランド本来の要素を垣間見ることができます。ブランドカラーである「ブルー」のトンネル状の入口をくぐると、ガラスと金属の角パイプでインテリアされた聖水洞の雰囲気を絶妙に表現する古いコンクリート剥き出しのスペースが現れます。ここにディスプレイされている洋服は航空分野で使われる独特なハンガーを利用して掛けられており、アパレルとともにキャリーケースのブランドも入店しています。メタル製のシステムラックが設置されていて、そこには本が置かれています。そのスペースの一番奥の方がここのポイントとなる空間です。円形の窓には、飛行する航空機から見える空の絵が描かれています。現在、ここでスクープ(SCOOP)というブランドのスイーツが販売されていますが、今後はコーヒーも一緒に提供される予定とのことです。面白いのは、スイーツを楽しむベンチが空港の預入手荷物を運ぶベルトコンベアをモチーフに作られているところです。他にも航空に関連したスペースのシーンや備品を取り入れることでアパレルとのバランスをとっています。
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なんと言ってもブランドロゴのネームバリューを引き立たせるためにメインカラーのブルーを大胆に使っている点も特筆されます。
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そんな雰囲気のスペースだけあって、映画の中で自分の姿や生き方を変えて全く違う人になり切っていた主人公のように、その才気煥発さを遺憾なく発揮しつつも、自らを失わず、誰にも捕まらない世界へと繋がる空間にいるような気分になります。
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こんなにもウイットに富んだスペースですが、訪れる人々はこのスペースをどのように捉え、キャッチすればよいでしょうか。そのように考えるよりむしろ、自分なりの方法で捉えてこそ、とても興味深いスペースになるかと思います。
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できるものなら捕まえてみろ!Catch me if you can、ここは聖水のパンナムフラッグシップストアです
- 位置_ソウル特別市ソンドン区ヨンムジャンギル89、1階
- 営業時間_ 11:00~20:00
- メニュー添付
- 駐車不可
- #ショップ
- #カフェ
@spot_editor
聖水洞(ソンスドン)が一瞬でパリに変わる瞬間、
2022年5月1日にオープンしたディオール聖水は
フランス・パリにあるクリスチャン・ディオールのフラッグシップストア『30モンテーニュ』を小さくして建てられ、
ここが聖水とは思えぬ、パリのモンテーニュ通りにいるかのような感覚になれる場所です。
周囲には色とりどりの花々や緑豊かな木々、そして芝生があり、しばしおとぎ話に出てくるようなフランスの庭園を満喫できます。
店内の天井は高く、至る所から降り注ぐ日差しで、製品や家具、内装の美しさを最大限に引き立ててくれます。壁にはディオールならではのトワルドジュイ柄の韓紙を取り入れ、韓国を代表するデザイナーであるイ・グァンホ氏やソ・ジョンファ氏が内装を手掛けることにより、芸術性や職人気質の粋を加味しています。
店内の一角には小さなディオールカフェもあります。
陽当たりのよいカフェの窓越しからは美しい庭園が見え、
その反対側の壁にはメディアアートがあり、
クリスチャン・ディオールが幼い頃に過ごしたグランヴィルの邸宅や
ブランドの象徴であるバラの花を用いた神秘的な庭園が映し出されています。
* オープンの日を心待ちにしていましたが、予約を失敗してしまい途方に暮れていましたが、当日、予約なしでも順番待ちできるという話を聞いて、平日の午後に行ってきました。思ったより待ち時間が短く、ケータイの番号を登録して1時間ほどで入場できました。カフェも当日の状況によっては予約なしで入場可能。ストア、カフェ両方とも予約なしで行ってきたレビューでした!
- add. ソウル特別市ソンドン区ヨンムジャン5ギル7
- insta. @dior
- 事前予約はディオール聖水のアプリで可能
- #複合文化施設
- #ショップ
- #カフェ
- #スイーツ/ベーカリー
@_hyogeun_
「境界をなくすオブジェ」-コンフォート・ソウル
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階層の階を表す「段」は空間を分けることもできますが、一つ一つの段が集まり形成された階段は、再び段と段の境界を曖昧にします。「コンフォート・ソウル」は階段をオブジェとして演出し、そこへ美的要素を加えることで、その境界をなくしています。
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コンフォート・ソウルは南山(ナムサン)の中腹にあり、建物の手前にはトゥトッパウィ路、その後には素月(ソウォル)路が通っています。建物を挟んで走る二つの道路の間には4階建てビルの高さに相当する15メートルの高低差があり、それぞれ違った性格の道となっています。地元住民が通る道とよそからやって来た人が行き来する道、建物と建物をつなぐ道と街と街を結ぶ道、物静かな空間と活気に満ちた空間、このように二つの道はそれぞれ別の性格を持つ道となっています。
山の斜面に建てられる建物は、通常、屋上を駐車場にし1階を表玄関にする、あるいはその逆に設計し、下を通る道と上を通る道の境界を明確に分けています。しかし、ここにあるビルは、屋上を展望台にして境界をなくし、垂直の動線である階段によってその境界を最大限になくすことで、人々を上下に、またその逆の方向へと引き寄せます。つまり、対比される二つの道を融合させるのです。
1階の階段は中央に設置され。その存在感を増しています。階段は空間を二つに分け、深く浅い空間を創り出すとともに、向きを変えながら上へと上り、さらに別のフロアの空間を分割したり突出させる役割も果たしています。このダイナミックな造りの階段は、時には目隠しの役割も果たし、建物の手前にある住宅からの視界も遮ってくれます。さらに階段を上がって周りの建物が見えなくなり青い空が見えてくると、その傍らからは厚岩洞(フアムドン)の素晴らしい景色も満喫できます。階段と位置関係により、各フロアのよさも変わってきますが、斜面に建つ建物を上下に挟んで通る二つの道の境界を曖昧にし、人々がめぐり会えるように工夫することによって空間に多様性をもたらしています。
階段から始まったリズムは階段の側壁にまで影響しています。階段側壁には縦方向に無数の筋が刻まれ、それぞれの筋は弧を描くような陰刻のデザインとなっており、そのデザインは垂直性とリズム感を実現、ソウルの多様な変化を吸収しているかのような仕上がりとなっています。複合文化施設として様々な人たちが集まり新たな物語を作り上げていくという建物のコンセプトにもしっくりします。
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機能とともに美的要素を加え、建物全体にダイナミズムを与えたコンフォート・ソウルは、周辺を活気あふれる場所に作り変え、人々を引き寄せる「求心力」的な存在になることでしょう。
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建築:境界のない作業室(@boundless_korea )
写真、文:シン・ヒョグン(@_hyogeun )
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#いい_経験を_与える_空間
- ソウル特別市ヨンサン区フアム洞358-144
- ストア、グラウンド 毎日11:00~20:00/カフェ 11:00~21:00(月曜定休)
- #フォトスポット
- #複合文化施設
- #ショップ
- #カフェ
- #展示
- #博物館
@my_season___
物質と光が描き出す時空のつながり、
アーダースペース3.0新沙(シンサ)フラッグシップストア。
6階建てのビルはフロアごとにスペシャルセクションとなっており
ショップの他にも、4階にはカフェ「タンプラネット(TONGUE PLANET)」、
6階にはルーフトップがあります。
一方通行の動線で6階まで上がってから
エレベーターで
1階まで降りるシステムですが、
1階ではライフスタイルショップや
アーダーエラー(ADER ERROR)のシンボル的なオブジェの
展示が鑑賞できます。
- ソウル特別市カンナム区トサンデロ11ギル31
- 11:00~21:00
- バレットパーキング可能
- #自然
- #フォトスポット
- #複合文化施設
- #ショップ
- #展示
- #博物館
@bongtographer_
伝統と現代の共存、#雪花秀フラッグシップストア
ソウル韓屋村の象徴・北村に1930年代に建てられた韓国の伝統家屋・韓屋と1960年代に建てられた洋館が一つとなったストーリーのある魅力的な空間があります。
韓屋の柱や垂木、
屋根の原形をそのまま生かし、
奥ゆかしさと現代的なおしゃれさが同時に
感じられる雪花秀ならではの空間です。
昔の趣と現代の美しさが一つになった、
最も輝く空間ではないかと思います。
非常に韓国的で、韓屋と洋館が調和し共存する
空間を体験してみたい方は
ぜひ一度訪ねてほしいところです。
- 雪花秀フラッグシップストア(@sulwhasoo.official)
- 10:00~19:00(月曜定休)
- 10:00~20:00(第1月曜休み)
- #複合文化施設
- #音楽
@_hyogeun_
「苦味薬にひとさじのビタミン」 -現代カードアートライブラリー
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韓国の大手クレジットカード会社・現代カード(Hyundai Card)は2013年竣工のデザインライブラリーを皮切りにミュージック、クッキング、アートライブラリーと次々オープンさせました。毎回多彩なテーマでライブラリーをオープンするたびに反響は大きく、自らの好奇心も膨らみ始めました。
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「現代カードはなぜ図書館に執着するのか?」
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現代に生きる人々への処方箋
アナログ的な動きが主の図書館にはゆとりがあります。読みたい本のテーマを考えながら検索し、その本を書架から取り出して読むという一連の動きは短くするできないからです。動きを短くすることができないため時間を短縮することもできず、自ずからゆとりを持って本を探して読むことになります。多忙で切羽詰まった日々を送る現代に生きる人々にとって「ゆとり」は大変必要不可欠なものであり、現代カードがその処方箋として世に出したのがこれらさまざまなライブラリーです。
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処方箋にひとさじのビタミン
良薬は口に苦し、体に良い食べ物は得てしておいしくないものです。企業は利潤を生みだすことを求められているがゆえに、多くの顧客を獲得しなければなりません。よくある、ありふれた普通の図書館では多くの人々がやってくることはありません。そこで現代カードは他にない特別さという要素をライブラリーに加味しました。ライブラリーごとに多彩なテーマを企画、ここでしか閲覧できない書籍や専門のキュレーターが本をおすすめするブックキュレーション、入手が難しいレアな本を一頁ずつめくって読むことができるスペースなどを用意しました。このような施策が功を奏し、憩いのひとときとともに日頃味わうことのない特別さを加えることにより人々を魅了するという現代カードの思惑は、大成功を収めました。アートライブラリーが2022年新たにオープンしたのも、現代カードライブラリーのこれら事業に対する考え方が素晴らしかったことを証明する形になりました。
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現代カードライブラリーに注目する理由
現代カードライブラリーは同社の事業のひとつとして建築と無縁のように見えます。しかし今日に至るまで現代という企業が示してきた空間に対する愛情を見れば、話しは別です。現代はデザインに長けている会社なだけに、建築にも高い見識を備えています。プロジェクトに盛り込まれる空間をデザインする際には毎回、的確なコンセプトを設定し、敷地の選定や地域性を綿密に見極めます。そのため、その場所にぴったり調和した建物とその中に盛り込められたプログラムはシナジー効果を生み出し、建築の細部にまでこだわって、空間そのものが素晴らしい一作品となります。空間が与える力を現代という会社はとてもよく理解しているのです。
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アートライブラリーがミュージックライブラリーのすぐ隣にできたのは偶然でしょうか?
建築について高い見識をもつ現代カードが、ただ闇雲に梨泰院(イテウォン)の地を選んだ訳ではありません。梨泰院がある龍山(ヨンサン)周辺は、古の時代の都・漢陽(ハニャン)の後背地であると同時に、漢江(ハンガン)の南へ容易に渡河することができる地理的な利点も兼ね備えている場所です。それゆえに軍事面においても要衝の地として認識され、日帝強占期(1910~1945年)には日本軍に、1945年の解放後には米軍によって龍山の地の一部が占領されることになります。米軍が駐留し梨泰院には軍関係者らが余暇を楽しむ遊興施設ができ始め、外国文化に真っ先に触れられる街に発展しました。そのような経緯から梨泰院には様々な文化が集まる多国籍的な文化集結地となり、ギャラリーをはじめとする芸術文化施設が梨泰院に数多く存在することも、こうした歴史的背景があるからです。
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では、新たにオープンしたアートライブラリーはどんな場所?
現代が手掛ける空間らしく、意図する空間の雰囲気やコンセプトがよく読み取れるような場所です。ヨーロッパの小都市を巡り、なんとなく立ち寄った街の本屋で期待もしていなかった貴重な本に出会ったような瞬間さえも感じます。
建物の前面がガラス張りで、建物の内と外との境界をなくし、人々を中へと引き入れます。建物内の中央には、らせん階段とエレベーターを配し、人々の耳目を集中させます。カードをタッチして上に上がる瞬間から空間の雰囲気は180度変わってきます。モダンな姿から古風なインテリアへ、西洋芸術をテーマにしているアートライブラリーにふさわしい空間です。
LPショップから流れる音楽は、建物の前面がガラス張りのアトリウムに響き渡ります。日常と音楽が一つとなり、消え去った境界の中で本を読むことに没頭できる、そんな憩いのひと時を満喫できます。
写真・文:シン・ヒョグン(@_hyogeun_)
建物の2階がアートライブラリーとなっており、現代カード会員またはDIVEアプリの会員のみ入場可能。
#いい_経験を_与える_空間
- ソウル特別市ヨンサン区イテウォンロ248、2階
- 火曜-土曜:12:00~21:00 / 日曜:12:00~18:00 / 月曜休み
- #ショップ
@_hyogeun_
「香りと思い出」
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香りは忘れていた記憶を思い出させる力を持っています。ある香りを嗅いだ時、自分はクチナシの花の香りを嗅いだ時の思い出がよみがえる瞬間があります。
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クチナシの花は5月から6月、家の前のマンションの片隅で咲き始め、強い香りを放ちながら自らの存在を知らせていました。花の数は少ないものの、その香りはマンション全体に広がり、家の前にある階段から花の香りが温かく迎えてくれるかのように道案内してくれたほどでした。クチナシの花の香りは他の花と比べ、濃厚でしっとりとしていながらも気にさわるほどではなく、そっと包み込んでくれる香りと言えばお分かりいただけるでしょうか。
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高校生の頃からいつもこの時期になるとその香りを嗅いでいたので、この香りがする度に高校時代を思い出すようになりました。
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状況は変われど、香りにまつわる似たような経験は一度や二度はあると思います。道で偶然嗅いだ香水の匂いで誰かを思い出したり、風に運ばれてきた香りである場所を思い出す、そんな経験です。
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今回紹介するスペースは、このような香りが持つ絶大なパワーをテーマにつくられた「タンバリンズフラッグシップストア」です。
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一般に香水やディフューザーを販売しているところでは商品と試香紙を一緒に並べ、試したい人だけその香りを嗅ぐことができますが、ここ、タンバリンズフラッグシップストアでは商品の香りが内包する意味をもその空間に解き放ち、訪れる人々に香りと共に思い出もプレゼントしてくれます。
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木や森の香りを感じさせるウッディノートの香りや温かな土の香りを連想とさせるオブジェ、ほのかに広がる松の葉の香りを思い出させる木材で作られた空間、大地が発する気を感じる赤い光に染まった空間まで、様々な香りが様々な手法でそれぞれの空間に広がっています。
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五感の中では視覚が最も大きな比重を占めますが、他の感覚も劣るという訳ではありません。人間の五感は相互作用によってシナジーを生み出し、中でも視覚と嗅覚のシナジーは相当なもので、ここ「タンバリンズフラッグシップストア」はすでにこのシナジーの重要性を認識しているように思われます。
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様々な香りで様々な空間を提示する、タンバリンズフラッグシップストアに是非立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
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#いい_経験を_与える_空間
- ソウル特別市カンナム区アックジョンロ10ギル44
- 11:00~21:00
- #ショップ
@_hyogeun_
ベーシックに「おしゃれ」を一滴
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韓国のオンラインファッションセレクトショプをおすすめするとしたら、断然「ムシンサ」をイチオシします。ハイブランドからデビューしたばかりの新生ブランドまで、ほぼすべてのファッションブランドがここに入店しているからです。どんなスタイルであっても、ここにアクセスして数回クリックするだけで好きな商品を選ぶことができます。さらに自分が選んだ商品と似たような商品もおすすめしてくれる上に、それに合うコーディネートまで提案してくれるので、利用者の立場としてはとても便利なプラットフォームと言えます。
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しかし、こうしたプラットフォームはファッションに興味のある人には天国ですが、ようやくファッションに目覚めたばかりの人にとっては、混乱してしまうこともあるかと思います。確固たるファッションスタイルを持たない人にとって、あまりにも多くのカテゴリーや商品、怒涛のごとく降り注ぐブランドは、むしろ毒になってしまいます。そこでこうしたファッション初心者をターゲットに誕生したのが、ムシンサ独自のブランド「ムシンサスタンダード」です。シーズントレンドを適度に取り入れつつも、無難で、目立つスタイルより落ち着きがあるスタイルを優先、クローゼットに一着あれば重宝する製品をデザイン・販売しています。ファッション初心者の方にも気軽に洋服に触れて次第に自分のスタイルを見つけ出すことができます。
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そんなムシンサスタンダードが今度はオフラインでも事業を展開することになりました。同ブランドが持つ無難でありながらもおしゃれできるイメージをどのように実店舗のスペースで表現するのか非常に興味がありました。
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この実店舗のムシンサスタンダードのスペースは、最も普遍的で、かつ好む好まないの差が少ない店作りとなっているようです。無難な外観に、店内は白い壁になっており、製品をより引き立たせています。しかし、一般的なSPA(製造小売業)ブランドとはスペース構成が異なり、店内は無難ながらもおしゃれな「ムシンサスタンダード」ならではの特徴がよく表れています。階段の手すり、照明、店の真ん中にある垂直ディスプレイ、メゾネットを利用したスペース構成など店内のいたるところにおしゃれな要素が感じられます。
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中でも一番目につくのはメゾネットを利用したスペースです。メゾネットの代わりに階段を設けて上のフロアと繋げることもできたはずですが、メゾネットを利用し展示場を作り、1階を一望できる開放感を与えています。フロアの高さと幅を変えることによって様々なスペースが利用できるよう工夫がなされています。
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建築分野では特定のブランドの店舗スペースをデザインする際、そのブランドの個性が店舗スペースにも反映されるよう十分配慮しなくてはなりません。はっきりした個性を持つブランドのスペースを展開することの方がむしろ簡単に思えるかもしれませんが、「ムシンサスタンダード」のように基本に忠実なブランドのスペースを作り上げることは決して容易ではありません。しかしながら、このムシンサスタンダードのスペースはブランドが持つ個性を十分に反映した店づくりとなっており 、オンライン・オフライン双方で名実共に人気プラットフォームとして認められることは間違えありません。
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#いい_経験を_与える_空間
- ソウル特別市マポ区ヤンファロ144、B2-2F
- 11:00~21:00
- #ショッピングモール
- #フォトスポット
- #複合文化施設
- #カフェ
- #レストラン
- #スイーツ/ベーカリー
- #観光スポット
@architectu
1ユーロプロジェクト
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政府機関が主導する都市再生方法の一つです。元々はイタリアの中世様式の住宅の保存を目的にすると同時に、都市組織が不動産市場に飲み込まれるのを防ぐ対策の一環として、イタリアの田舎町・マエンツァでも行われたプロジェクトです。1ユーロで古い空き家を買う条件として、購入した人は3年以内にリノベーションを終え、5年間の売買禁止条項を守らなければなりません。チャレンジ精神にあふれる若者たちが移住し新しい事業を立ち上げたり、村の共同体の一員となって活気を失った町に都市の活力を吹き込んでくれます。さらに、いろんな国籍の人々もこの都市組織の住民になれるという魅力的なスローガンまで掲げています。
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これを「インキュベーション事業」といいます。
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しかしながら、ソウルにあるこの空間は国が主導したものではありません。民間主導でここソウルで行われた1ユーロプロジェクトとはソウル特別市城東区(ソンドング)聖水(ソンス)界隈の松亭洞(ソンジョンドン)にあるコッキリ(ゾウ)マンション団地に隣接する古い組積構造の建物。若者に今人気の聖水洞界隈ということもあり最近話題の様々なブランド店が入居し、静かなこの街に活力を吹き込んでくれる空間にもなっています。
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素敵で華やかな空間というより、沈黙していた空間が新たな持ち主に出会い、共同体を作り、さまざまな人々を呼び寄せる温かい空間となっています。
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このプロジェクトの真価はいま問われているのではありません。今後どうやって進展していくのかが、より重要だと思われます。今後に期待といったところでしょうか。
- 住所ㅣソウル特別市ソンドン区ソンジョン18ギル1-1
- 営業時間ㅣ11:00~20:00(火曜休み)
- 参加ブランドㅣBOMARKET、SEOUL GARDENING CLUB、LUKAAL FUTURE SPACE LAB、Bath、vedére、ab.scent、ヨリ(yo!lee)インリュ、better earth、Brewing Lab、PINKWONDER、Baepet、SDBP、O_OM、Foodle、Daily、ANTIQUE HOUSEOUSE
- 駐車不可